オペラ「バジャゼ」より「花嫁として侮辱され」

バジャゼはどうもマイナーなオペラ、というか合作オペラなので映像がありません。花嫁であるのに夫に蔑まれたと言った内容。A-A'-B-A-A'なのですが、制限時間5分ということでA-A'-B-A'にカットしました。しかしどのCDを聴いてもB部分さえカットされていてA-A'-A'なんですよね。。録音の無いBの創り方に悩みましたが、とにかく間延びしないこと、Aとの明らかな対比をつけること、歌詞に伴った明確な強弱がついているのを忘れないこと、の三点を大事に歌うことに。強弱は「愛しているのに(メゾフォルテ)、彼は不実です(ピアノ)。希望をもっているのに(メゾフォルテ)しかし彼は冷酷です(ピアノ)。」と言った感じ。歌い易いと言えば歌いやすい強弱ですが。そしてこの曲の聴かせどころはA'部分の装飾音。声や言葉よりも息を先に流すのがコツなんでしょうね。ア母音が先行しないように。
ゆっくりとした曲を4分30秒歌うにはかなりの集中力が必要です。ブドウ糖なめて行くしかないですね。

佐藤しのぶ 出逢いのハーモニー スペシャル2007

2007年9月30日(日)開場14:15/開演15:00
佐藤しのぶ 出逢いのハーモニー スペシャル2007
横浜みなとみらいホール 大ホール
主催 テレビ神奈川

7月にCDで聴いて驚いた佐藤しのぶ氏を聴きに行ってきました。とにかく人としての輝きがすごい人でした。発音が美しく際立つのは、子音の運びが計画的なのと、母音の力の抜き方が上手いからだと思われます。あと、話し方がセクシー(笑)。セクシーつながりで言うと、仲道郁代氏のセクシーさもすごい。ついでにアルミンク氏の王子っぷりもすごい。錦織健氏は期待通り(笑)。ビジュアル系コンサートでした。

東京二期会オペラ劇場「魔笛」

2007年7月29日(日) 14:00
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
魔笛」オペラ全二幕
新国立劇場オペラ劇場
指揮: 高関 健
演出: 実相寺昭雄
http://www.nikikai.net/lineup/mateki/index.html

数年前に「テレビでバルタン星人やカネゴンが出てる魔笛を放送していた」と話題になりましたが、私はその話が子供だましやウケ狙いに聞こえて、しっかり見ることはありませんでした。今回その再演ということできっと面白いものだろうなとは思っていたのですが結局チケットを買うことは無く…しかし当日朝大学の友人から突然の電話。夜からだと間違えていてバイトを入れてしまっていたので、代わりに行ってくれないかと(でもチケット代は私持ち・笑)。
運良くその日は一日暇人で家に引きこもろうと思っていたので、廃人的な体にムチ打って、約束の時間に10分遅れて行って参りました。席はなんと新国の前から3列目…!!これで学生2000円…そりゃオペラをすると赤字になるのも分かります。

さて、幕が上ってからのお話ですが…、それはそれは、引き込まれてしまいました。幻想的な舞台に可愛いコスチューム、現実的な日本語の台詞、そして一流のドイツ語歌唱。「獣」としてウルトラマンの敵が何体か出演しましたがそれは特にお話の決め手なのではなく一瞬の出来事でした(のちに獣らはカーテンコールでブラボーをもらっていましたが)。終わってから冷静に考えると、子供だましでもウケ狙いでも無く、いつもは偉ぶっている大人もメルヘンな気持ちになれるような、そんな舞台だったと思います。今の日本の都会はせこせこして生きることが多いしその中でタミーノのような誠実な人が勝ち抜いていくのだろうけど、パパゲーノのように、飲んで歌って夢を見れば良い、そんな生き方も良いな、と生き方を提案された気にもなりました。
家に帰ってからゆっくりとチラシを見ましたが、学校で何度か目にした時は何なのかよくわからずしっかり見なかった絵が出演者全員そのままのイメージなんだ、いや絵のキャラクターがそのまま舞台の上に飛び出したんだということが分かり、今やチラシに愛おしささえ感じます。
この公演に関わった人はみんな楽しかったんだろうなと思います。指揮者、プロンプターもところどころでネタを仕込んでいてとても楽しそうでした。正直うらやましかった!外国の高品質で芸術的な舞台も良いけれど、このような舞台、日本でずっとずっと続いて欲しいと思います。

歌曲集「ミルテの花 Op.25」より「献呈」

Widmung (〜"MYRTHEN"Op.25)
作曲 Robert Schumann
作詩 Friedrich Ru¨ckert
作曲年 1840年
<自分的歌詞訳>
君はわが魂、君はわが心
君はわが喜び、おお君はわが苦しみ
君はわが世界、その中で私は生きている
わが天である君、その中へ私は浮かぶ
おお君はわが墓、その下へわが苦悩を永遠に葬った
君は憩いであり、君は安らぎである
君は天から私に与えてくれたものである
君が私を愛するということは、私を私にとって価値あるものにし、
君の眼差しは私を晴れやかにしてくれた
君は愛をもって私を上方へ持ち上げた
わが良い精神、わがより良き私よ!
素晴らしい曲です。初めてこの曲を歌ったとき、泣きました。まじで。この地球に今まで、ついに結婚できる喜びでこんなに素晴らしい曲を作った人がいただなんて。よく知られている通りロベルトとクララは父の反対などの障害を乗り越え結婚に至り、その年(1840年)に134もの歌曲を作り上げ、その年を自ら「Liedersjahr(歌の年)」と名付けました。どれもこれも傑作!!愛って、こんなに大きなパワーを持つものか…
しかしロベルトとクララの喜びをあらわす歌だけとして歌うのは私はナンセンスだと思います。シューマンは音楽という媒介物を通して詩を伝えているのだからリュッケルトの詩も忘れてはいけないし、それを得て私も喜びを感じなければいけません。
曲は明確なA−B−A’形式。曲の変化があるところにritard.が置かれているのでa tempoすべき場所も明確だと思います。私の解釈としてはAはとにかく喜びを歌い、Bでそれをかみしめ、A’で愛を自分の中で確信的なものにしていて、それがAのmfとA’のfの差なのでしょう。躍動感の溢れる伴奏形はいかにもlebhaftで、だからといってもInnigを忘れてはならず、流れるような歌の旋律はInnigだけれどもlebhaftを忘れてはなりません。「喜び」や「天」という言葉は高い音に置かれ、「苦しみ」や「墓」へ向かってdecresc.と共に下降形が置かれています。まさに言葉と音楽が結び付いていることを実感する瞬間です。逆に言えば音からも言葉を感じ取ることが出来る気がします。

歌うにあたって注意すべき点はAとA’の歌いわけ。それと過度のテンポの揺らしは禁物。さらにがっつかないということ。Du,Ruhなどのウの母音。
なんだかんだ言って、全ては詩を愛情を込めて、しかし冷静に感じ取ることなのだということにやっと辿り付きました(笑)。
聴いたのはVesselina kasarova、Mitsuko Shirai、Sinobu Satoh、Fischer=Dieskau、あと及川浩治氏のリスト編献呈。kasarovaはメゾらしい太い献呈、Mitsuko ShiraiとFischer=Dieskauは流れるような快感の中に色々なものが詰まっていて、息とかドイツ語の勉強をしっかりしてこの演奏に近づきたいと思いました。そして見落としがちだった佐藤しのぶ氏!!伴奏はN響のオケなのですが、その声の深さ、発音の良さに驚いてしまいました。さすが国民的歌手です。紅白等出ると安っぽく見る人もいると思うけれど、佐藤しのぶ氏、ヌッツォ氏は本当に実力派だと思います。
さあ明後日試験で歌うぞー!最後は喜びとか苦しみとか感じて歌えるといいな。

松本隆訳/シューベルト:歌曲集「美しき水車小屋の娘」

松本隆訳 / シューベルト : 歌曲集「美しき水車小屋の娘」

松本隆訳 / シューベルト : 歌曲集「美しき水車小屋の娘」

学校の廊下でこのCDのアーティストに遭遇した後の授業で水車小屋を学んだので久しぶりにこのCDを聴きなおしましたがやっぱりすごい!!決して欺いているのではなく、すごすぎて面白い。このCDが出た頃に聴いた時に比べてドイツ語が少しはわかるようになったのだけれど、ドイツ語で感じる言葉がそのまま日本語に表されているというか…楽譜の後ろに載っている対訳や昔の人がつけた日本語訳詞とは違って格段とわかりやすい、感じやすい詩になっています。放浪少年が粉挽き家の美しい娘に恋をし、二人はそれなりに挨拶をできる仲になった。しかし娘は狩人に心惹かれていってしまう。少年は娘が好きな緑色を自分の好きな色としたけれど、実はその緑は娘が心惹かれる狩人の色(訳詩者は服の色と解釈)であることを知り、その後娘が緑色に触れる度に嫉妬に苦しむ。そして川に自殺を図り、川は子守唄で少年を包む…そんな詩が今までよりもわかりやすくなりました。歌詞を詰め込んだり無理しているところも無く、聴いていて心地よい音楽であることは変わっていません。その曲を確実に感じ取っている伴奏と美しい日本語の暖かい歌唱が素晴らしく、よくこのプロジェクトをこううまく成功させたなあ、と感心してしまうほどです。

羽田健太郎氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

ヴィオラとピアノ伴奏による歌曲

ヴィオラとピアノ伴奏による歌曲

ヴィオラとピアノ伴奏による歌曲

ということで白井光子神第2弾です。メゾソプラノヴィオラの調和のなんと美しいことか!聴くきっかけとなったのはBrahmsの「Gestille Sehnsucht」のヴィオラパートを半年くらい前のソルフェージュの授業で聴音していて(笑)(ハ音記号にいきなり書くの無理だし!!)、一昨日その楽譜をカバンから発掘したからなのでした。そういえば2週間くらい前にヴィオラ奏者の方が「Brahmsとメゾでとても素晴らしい歌曲があるんですよ」とおっしゃっていたのですがその時は「へぇ〜」くらいしか答えられなくて…今思えば聴いてたじゃん!!てか楽譜書いてたじゃん!!私のバカバカ!!気になった曲はすぐに聴いて自分の中に消化する習慣を持たなくちゃ。
さて白井光子さんを神と讃える理由として挙げられるのは、何よりもドイツ語の発音のよさ(=限りなくネイティブに近い)で、歌声もいわゆる日本人のおばちゃんではなく現地のおばさまの声なのです。やっぱりドイツ歌曲を歌うにはドイツ人になってみないとな…昨日ドイツ歌曲をクラスの前で歌う授業があったのだけれど、An die Musikを歌ったら随分と発音について叩かれたのでした(泣)まずはお金ためてドイツ旅行行くぞ。